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【海街リポート】「楽しい防災」で大切ないのちを守る 東日本大震災の記憶をつなぐ 岩手・陸前高田市 

 月に一度東日本大震災の記憶を繋ぐ特集「海街リポート」です。津波で陸前高田市の家が流された18歳の女子大学生が、震災を知らない子どもたちに「楽しい防災」を伝えようとしています。なぜ「楽しい防災」なのか、取材しました。 江口アナ「幼いころに震災を経験した若者が、当時を知らない中学生に防災の大切さを伝える授業を行います。」  中学生が作っているのは、ビニール袋と布を使って作る「簡易おむつ」に。 「わ~ついた」ペットボトルと非常用ライトを組み合わせた「即席ランタン」です。  教えたのは、この春青森公立大学に入学した陸前高田市出身の小野寺麻緒さん18歳。 「一番は防災を難しいって思わないでほしくて」 めざすは、「楽しい防災」の授業です。麻緒さんは5歳の時に東日本大震災の津波で自宅を流されました。津波の怖さや災害に備える大切さを、震災を知らない子どもたちに伝えていかなければならないと考えてきました。 小野寺麻緒さん 「幼稚園のお友達なんですけど、すごい仲良かった。泣いちゃう…すごい仲良かった子たちも、突然いなくなっちゃったから…やっぱり、当時のことを思い出すといまでもやっぱり辛いし、悲しくなるんですけど、それでもやっぱり前を向いて歩いていかないとなって思っているので、活動はそういう気持ちが大きくて始めようと思いました」 再び災害が起きた時、大切な人のいのちを守れるような人になりたい。中学1年生の時に父親のすすめで、防災講座に半年以上通って勉強し、当時最年少で「陸前高田市防災マイスター」の資格をとりました。 「いつもあんなキラキラしてきれいな海が、急にバッて、怪物みたいに襲ってくるんです」  高校生の時には、自分で企画して、震災の後に生まれた小学生に「防災」の授業をしました。子どもに教えてもわからないんじゃないかと周りから言われ、落ち込んだこともありました。でも子どもたちは、想像よりもずっと一生懸命に考えてくれて、麻緒さんは伝え続けようと決めました。  この日、高校卒業間近の麻緒さんは、母校の中学校で防災の授業をしました。 1人で活動していた麻緒さんに、仲間ができました。  市内で防災の体験学習などを行う一般社団法人の職員や同じ思いの大学生と一緒に、意見を出し合いながら伝えます。授業では、震災の時に0歳から1歳だった中学2年生に防災グッズの作り方を教えました。 小野寺麻緒さん「全部切って開いて」  ビニール袋の取っ手と両側のマチを切って開きます。真ん中に、折りたたんだ布をのせれば、「簡易おむつ」の出来上がり。災害時、赤ちゃんのおむつがなくても簡単に作ることができます。少し大きめの袋で作った生徒は、実際に自分ではいてみて思わず笑顔に。麻緒さんの狙い通りです。 「防災に対して【難しい】じゃなくてなんだろう【楽しいな】自分でもできるんだなっていう風に考えてもらいたいって思ってます」  震災後、家がなくなった麻緒さんは、この中学校の体育館に避難しました。5歳で体験した、寒さ、空腹、不安な気持ち。避難所では、子どもも大人も関係なく困難な生活を強いられることを知っています。授業で、体育館を真っ暗にしました。どれくらい大変なのか、震災を知らない子どもたちが災害に備えるきっかけになればと考えました。 小野寺麻緒さん「避難所はですね思ってるよりも真っ暗で、本当にこのくらい暗いんですね、電気がなくて、実際に私も避難所生活をしてて、夜とかすごく暗くて怖かったし」  でも「楽しい防災」は、ここで終わりません。真っ暗な避難所で役に立つ「即席ランタン」の作り方を教えました。 「わ~きれ~」  非常用ライトの上に水の入ったペットボトルを置くとライトの光が水に反射して明るくなります。スポーツドリンクのように白く濁った液体の方が、光が乱反射して、より明るくなります。授業の後、麻緒さんに話かけたのは、震災当時1歳で、何も覚えていない菅野りれいさん(14)です。18歳と年の近い麻緒さんが教えてくれて、自分だったらどうかと思いながら話を聞けました。 りれいさん 「おむつのやつがいちばん印象に 残ってるんですけど」♪麻緒「はいてたから」♪りれい「はいてたから、いろいろためになるものが多くてやってみたいって思いました。ありがとうございます」 防災に興味を持ってもらえたようです。大切なのは、一人一人が自分で考えること。そのために、これからも「楽しい防災」を伝えていきます。

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