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【フカボリ】ことしも相次ぐクマの出没 最新の対策は? ことしの出没傾向は? 岩手

(吉岡キャスター)きょうのフカボリ、担当は原記者です。(原記者)ことしもクマの出没が相次いでいます。特に今週は、一関市のまちなかで毎日のように目撃されています。  車が赤信号で停止しようとすると。  運転手「あっ、あっ」  画面奥の方、車道を横切っているのはクマです。5月14日の午後6時ごろ、JR一ノ関駅からわずか600メートルほどの市内機織山地区で、ドライブレコーダーで撮影したという映像です。  原記者  「こちらJR一関駅です。けさ、こちら駅の構内でクマが目撃されたということです」  駅で体長1メートルほどのクマが目撃されたのは、5月14日の午前7時ごろ。通勤、通学で多くの人が駅を利用する時間帯でした。  近所に住む人  「びっくりしかない。クマって怖いよね」  一関市役所森林保全・獣害対策係千葉真之さん 「通学や通勤に利用する人も多いので、危険な状態。近隣の中学校や保育園にも連絡して注意喚起は行った」  クマは、5月12日日曜日に駅近くで目撃されて以降、14日火曜日の朝と夕方。15日水曜日には駅南の住宅街。17日は中学校そばなどで相次いで出没しています。  けが人はいませんが、市がわなを設置したほか、近くの小中学校では、登下校の見守りを行っています。これだけ出没するのはなぜか、専門家に聞きました。  東北森林総合研究所大西尚樹博士 「基本的にはエサを求めて動き回って市街地に降りてくるというか、はみ出してしまう感じだが、一度(人里に)きたクマがこっちでいい餌場を見つけた、そしてさらにそこで何か怖い思いに合ってない、いやな思いをしていなければそのクマにとっては使える比較的安心できる場所。ということになればまたくる可能性は十分にある」  最新の技術を使った対策も全国に先駆けて進んでいます。  花巻市の担当者「夜間も映るように赤外線で映るようになっています」  花巻市が新たなクマ対策のため2か月前に導入したこのカメラ。クマが通ると、AI・人工知能が判別して市の担当者に通報するもので、市街地に近づくクマをいち早く察知しようと、川沿いに23台が設置されています。  原記者 「こちらのカメラでクマを検出すると、職員の端末にメールが送られます。クマの出没に備えることができます」  AIの設定をクマではなく、ヒトを判別するように設定すると、熱センサーで動く人を感知して自動で撮影。撮影した画像をAIがヒトかどうか判断します。AIをクマに設定すると、クマが撮影された場合のみ市の担当者にメールで画像が送られます。  こちらは秋田県内で自動撮影のカメラで撮影された画像です。花巻市では、市街地に近いAIカメラで撮影された場合は、市や猟友会が対応してクマを追い払うことにしています。  農村林務課 山口周行課長 「市街地にツキノワグマが出没すると、猟銃の使用ができない。河川の上流部分でツキノワグマを発見し早期追い払い活動をしたいと思いこのようなカメラを導入した」  花巻市では昨年度512件のクマが目撃され、市街地でも出没が相次ぎました。自動撮影のカメラを使ったクマ対策は政府も進めていて、花巻の取り組みは先進的な事例と言えます。  (吉岡キャスター)クマが市街地で目撃されることが多くなっている中、新しい取り組みの成果が注目されますね。  (原記者)昨年度の全国のクマの出没件数は、過去最も多くなりました。東北を中心に各地で出没が多かったんですが、特に岩手は全国最多の5877件にのぼり、前の年の倍以上となりました。  全国の人身被害も過去最多となり、岩手は49人。その内2人が亡くなっています。山にエサが少なかったことが、出没が増えた主な原因と考えられています。  (原記者)この状況を受け、国もいち早く動きました。達増知事をはじめ北海道や北東北の知事が去年11月に国に要望したことがきっかけで4月、政府はクマを「指定管理鳥獣」に追加すると発表しました。  伊藤慎太郎 環境相  「クマ類を指定管理鳥獣に指定いたしました」  指定管理鳥獣に指定されると、捕獲や駆除の費用が国の補助対象となります。要望から5か月あまりのスピード指定で、県は「クマの捕獲作業が大きく変わる」と期待しています。  県自然保護課 酒井淳総括課長 「指定管理鳥獣になると里に出てきたものだけじゃなくて、里に近い山にいるような場合に関してもハンターが入って行って、捕獲ができるようになるので、より里から遠い所で出てこないように捕獲できるようになるってところが指定管理鳥獣になる大きな違い」  岩手県内に生息するクマはおよそ3700頭と推計されますが、3400頭に減らしたいということです。  県自然保護課 酒井淳総括課長 「有害捕獲だけではなくて、指定管理鳥獣捕獲事業という環境省の事業を使って捕獲事業もできるので2本立てで取り組めるということ。捕獲圧を強めるという意味では強力な事業の種類が増えたということで、選択肢が増えたということになるかと思う」  過去最多の出没となった2023年度。専門家は、2024年度も警戒を呼び掛けています。  東北森林総合研究所 大西尚樹博士 「去年の大量出没というのは、やはり夏から秋にかけてのエサ不足というのが大きかったと思う。去年のような大凶作が2年連続で続くのは考えられないので、去年よりはひどいことにはならないと思う。ただ一方で、バックグラウンドとしてのクマの数が増えていて、分布域が人里に近づいているというのは変わらないので、大量出没はないとしてもいつクマが出てきてもおかしくないという状況はかわらない。常に注意を払うとか、情報収集に努めるとかをお願いしたいと思う」  (原記者)一関のように、クマはことしも市街地に出没しています。山や林と接している地域では特に注意が必要です。  (吉岡キャスター)以上、今週のフカボリでした。

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